ヒカリの筒ガラスの階段Y邸
Y邸は新大阪駅から、車で10分の所に位置する。
長屋にお母さんが、長男夫婦が近所の賃貸マンションにお住まいであった。この長屋を建替える計画である。
計画の条件を整理すると次の通りである。
1.長屋住宅の建替えであること。
2.二世帯住宅。
3.里帰りする兄弟家族のために、車庫を取りたい。
4.収納を多く取ってほしい。
まず長屋を切り離すので、敷地の境界は柱の中心になる。当然隣家のために、柱を残して雨が入らない様に壁をこしらえてあげないといけない。そうすると、自分のたてられる間口がますます狭くなる。結果、建築は2間の間口も取れなかった。限られた間口のなかで、必要な部屋を確保するためには、階を増やすしかなかった。
1階をお母さんの部屋と車庫。2階を居間・食堂・水廻りと物干し。3階を夫婦寝室と子供室、室外機置場と採光を確保するためのバルコニーである。
計画の初めの頃は、木造と鉄骨造の両方を検討した。構造の安全性と設計の自由度が得られない(木造では筋かいの配置の配慮しなければならない)ため、鉄骨造を採用した。
隣地の建物との隙間は、人が入れないほど狭い。このためメンテナンスを極力なくすために、屋根と外壁を耐久性の高いガルバリウムとした。
(職人さんは、手の届く幅に加工された鋼板を、身を乗り出して留めていくのだから大変です。ご苦労様でした。)
長屋住宅では、昼間でも電気を点けないと真暗だと、よく話しに聞く。
設計者として、1階までいかに光を入れるかが大きな課題であった。一つの提案として階段室を「光の筒」と見立てることにした。階段の上に大きなトップライトを設けて、光が燦々と降りそそぐようにした。階段をストリップ階段にして、踏み板を強化ガラスにした。強化ガラスには、滑り止めと飛散防止フイルムを取り付けた。また、壁を真っ白にして光の拡散を狙った。結果1~2階へ上がる階段は、電気を点けなくても不自由しない。お母さんの部屋も、物を取りに行く程度なら、電気を点けないそうだ。
これもおおよそ想像していたが、ストリップ階段にしたおかげで、1階と3階の窓を開けると風が通り抜けて、夏場は快適だとも話されていた。
収納においては、子供室のロフトをはじめ、床下や天井裏などを有効に利用した。クーラーや給湯機の室外機の置場も隣地との空きが少ないため、メンテナンスと目立たないことに配慮して計画した。
この住宅は、平面計画よりも断面計画が全てであった。
写真は、玄関の一部の壁を施主自ら塗り、家族みんなで手形をした。 完成を本当に喜び、愛着を持って下さっている。
平成19年9月